明日はどこへ

漂泊の記録

北ア 西穂西尾根(敗退) 20201226~27 

 

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【山行形態】山仲間と2人

【対象】雪稜、ラッセ

【場所】岐阜県高山市の西穂高西尾根

【日程】2020年12月26~27日

<26日>

新穂高(1050m地点)7:00

15:30西尾根2030m地点

<27日>

テンバ5:30

11:00ジャンクションピーク(2680m)

14:00テンバ14:30

17:30新穂高

 

【特徴】トレースなしのラッセル続き。わかんなしで後を付いてくる「ラッセル泥棒」に会った。ジャンクションピークで時間切れ敗退となった。

 

【記録】出発時、新穂高の登山者駐車場には10数台しか車がなかった。ほぼ満車だった去年の年末とは様変わり。新型コロナ第3波と寒波襲来予報で取りやめた登山者が多いのだろう。穂高平山荘までの林道は、数日前とわれわれの前を歩いたトレースがあった。登山者が少なく、ところどころズボズボはまって歩きにくい。穂高牧場から先はトレースはなく、まっさらな雪面が続いていた。今冬、西尾根に入る最初のパーティーのようだ。

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 牧場の柵を乗り越えると膝ラッセルの始まり。しばらくまっすぐ進み、正面に見える尾根の左の沢方面に進む。沢筋が狭まったところで尾根の急斜面に突入。首丈、胸丈のラッセルだけに、なかなか進まない。トップを交代しながら、やっとのことで尾根上に上がり休憩。赤布が残されているのを見つけた。そこからは西尾根。太もも、腰ラッセルが続き、ブッシュに柔らかい雪で足もとが安定しないので、歩みは遅々として進まない。昼過ぎになり、ガイド+客の2人パーティーが追いついてくる。途中で先頭を彼らに交代するが、何と彼らはわかんを持っていないため、途端にスピード落ちる。彼らが休んでいるところをすり抜ける際に「わかんを付けない主義ですか?」と聞いてみると「これくらいの雪ならいらない」とガイドは強がりを言う。「わかんなしじゃあ、最初の急斜面でわれわれのトレースがなかったら敗退だったよ」と思ったが、口には出さずわれわれが再びトップに立ち、あとはずっと先頭を行く。彼らはしっかりしたトレースあると見込んでわかんなしで、かつ新穂高をゆっくりスタートで来たのだろう。2030mぐらいでコルらしきものが出てきたので、ヘロヘロになったわれわれはそこでテントを張った。ずっと後を付いてくるばかりのガイドパーティーは、少し上でテントを張ったようだった。

 

 初日は目標の2340mのコルまでたどり着けなかったので、2日目は早めのスタート。すぐにガイドパーティーのテントを通り過ぎ、そこからの急斜面は胸を突く雪の量で、疎林になってくるとキノコ雪もあちこちで出てきて通過に時間がかかる、われわれのトレースをあてにし、ゆっくりスタートのガイドパーティーが途中で追いついてくるが、「先行きますか」と問いかけると、「どうぞ先行って下さい」と拒否。先頭に立つ気はないらしい。こんなガイドでも高い金を儲けられるとは、どんな商売だろうかと思ってしまった。というか、客の30歳ぐらいの男は、われわれがずっとラッセルするのを後ろから見ているだけで、追いついてきても「ありがとうございました」とも何とも言わない、驚くべき鉄面皮。こんな「消費者様」づらした奴とは絶対山には行きたくない!ラッセルで息が上がる中を、そんな思いが頭の中をグルグル回っていた。

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 樹林帯を越え、急な尾根になるところでわれわれがアイゼンに付け替えていると、ガイドパーティーはそそくさと横を通りすぎていった。そこからは風が強いし、ハイマツが出ているからラッセルはほぼなしだもんね。彼らのことを、まさに「ラッセル泥棒」という。山の経験ウン十年、かつて先輩からそんな奴らがいるとは聞いてはいたが、初めて会った。

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 ジャンクションピークで11時。頂上は目の前だが、われわれは体力的にへばってきているので、ここから往復2~3時間はかかるだろう。天気はいいが、ここで敗退を決めた。パートナーは初めての冬穂高の頂上だっただけに残念がっていた。私は昨年冬、西穂北西尾根に1人で行った時にジャンクションピークでしゃべった新潟の男性のことを思い出していた。女性と2人で西尾根を登ってきたという男性はその2カ月後、北アの別の山で遭難して逝ってしまった。山はいつどこで何があるか分からない。一瞬一瞬、一歩一歩を大事にする。それをあらためて胸に刻んだ。

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 10mぐらい先で休んでいるガイドパーティーも敗退するようだ。帰りはらくちんトレースをたどって、新穂高には夕方に着いた。頂上には行けなかったが、ほぼフルラッセルでそれなりに充実した山行だった。