明日はどこへ

漂泊の記録

北ア 笠ケ岳穴毛谷四ノ沢左俣Aルンゼ~笠谷上半部 20200921~22

【山行形態】単独

【対象】沢登

【場所】岐阜県高山市奥飛騨温泉郷神坂の北ア笠ケ岳穴毛谷四ノ沢左俣Aルンゼ~笠谷上半部

【日程】2020年9月21~22日

▼21日

槍見(970m)5:40

7:40 穴毛谷四ノ沢出合(1660m)

9:20 第1岩稜基部(2200m)

11:00 稜線ビバーク地点(2520m)

▼22日

ビバーク地点 6:10

6:50 笠谷右俣

7:40 左右俣合流地点(2020m)

10:30 南西尾根2680m地点 11:00

11:30 笠ケ岳頂上

12:10 ビバーク地点テント回収 12:40

17:10 槍見

【特徴】左俣Aルンゼを登った記録は最近見かけないため、第1岩稜へのアプローチを確認するのが目的のひとつ。第1岩稜の岩は一見固そうに見え、いつか登りたいという気が強まった。四ノ沢二俣付近の雪渓が切れていて、ガラ場を登って行けた。もう少し早い時期なら敗退だったろう。

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2019年4月に本谷方面から撮影したAルンゼ(矢印)。右側が第1岩稜

【記】

新穂高の登山者無料駐車場はシルバーウイークということもあり満車

槍見の駐車スペースにかろうじてあった1台分の隙間に駐車した

左俣林道から通い慣れた穴毛谷へ

左岸から右岸に渡るところでは8月末には水は全く流れてなかったが

平年並み程度の水量があった

四ノ沢出合までサクサク歩き上流を見ると

二俣で雪渓が切れ、スノーブリッジのようになっているのが見える

「もしかして、敗退」という気がしてきたが

二俣まで来るとスノーブリッジはすでに落ちており問題なく通ることができた

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四ノ沢二俣

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右俣は極度にもろそうな岩が積み重なっているのが見える

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これから登る左俣。うっすらと第1岩稜が見える


ピナクルルンゼとの合流部付近に7~8mの滝

そのすぐ上にも同じくらいの滝が出ていた

左右の斜面はもろいガラ場でまくことはできないが

滝は特に難しいことはなく登って行けた

ガスが晴れ第1岩稜が姿を現すと

鋭峰が続く日本離れした風景が出現した

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ピナクル五月晴れルートを登るパーティー

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第1岩稜がドーン。左がAルンゼ

youtu.be


ふとピナクルの方角を見ると

岩場下部にロープが垂れているのが目に入った

五月晴れルートを登っているパーティーがいた

アプローチで4、5時間も歩いてもいいというパートナーがいれば是非登りたいが、、、

たぶんいないだろうなあ

 

第1岩稜の右側、Bルンゼはものすごい狭いルンゼで水流も多い

左側のAルンゼはやや幅広で傾斜も緩く、伏流水になっている

第1岩稜末端付近のもろい砕石斜面をトラバースしてAルンゼに入っていく

ルンゼ内の下部は基本的にガラ場

石は足を置いても崩れることは少なく比較的安定しており

ルンゼ内をサクサク登って行ける

右側の第1岩稜側は垂壁

上からの落石には注意を払っていく

すると上の方に直径5~6mの巨岩がルンゼにはまり通せんぼしているのが見えた

標高は2400mぐらい

そこでチョロチョロ出ている水をプラティパス2つ分4リットル汲んだ

ずしりと4キロ重くなったザックを背負い

巨岩の右側の岩を登る

アルパイングレード3級ぐらいだろうか

右の壁に古い懸垂支点があり、かつてはここから下りたのだろう

今は打ち替えないと使えない状態だが

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第1岩稜の取り付き付近を見ながらAルンゼへ

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巨大なチョックストーンがはまっているのが見える

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岩場は難しくない

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巨岩を越えると槍ケ岳が見えた

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第1岩稜の側壁は1960年の初登以降はほぼ手付かずの岩場

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不安定な草付きを越えて稜線へ

 

巨岩の上はブッシュ帯になるが

ブッシュの中に不安定な岩やザレが隠れていて気を遣う

この急斜面の草付きを安全に下りるのはかなり難儀なことだろう

第1岩稜を登ったら、Aルンゼを下降するのではなく

そのまま上に抜けた方が安全と思われる

ブッシュ帯の傾斜がだんだん緩まり稜線着

以前ビバークしたことのある場所に移動しテントを張った

まだ午前中だが、たまにはまったりするのもいいかもしれない

天気は雨こそ降らないものの、ガスで周囲の展望は効かない状態が翌朝まで続いた

 

22日も明るくなり始めてから起床

準備をしていると上空のガスが薄くなってくるのが分かったので出発した

クリヤ谷の登山道を横切り

ハイマツの藪こぎを30分

笠谷右俣に降り立った

そこからさらに下り

2020mぐらいの左右俣の合流部までガラ場を下った

1カ所急な岩場があったがまいて下りることができた

 

数年前、笠谷を遡行したおり

左俣、右俣とも水流が少なく

沢登りの時はいつもトポを持たないこともあり

本流と間違えて右俣を遡行してしまった

今回は本流の左俣を登るのが目的

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笠谷の左右俣の合流点。以前は右に行ってしまった

しばらく登ると3つぐらいの滝が続いている滝場についた

ライミングシューズに履き替え

垂直の箇所ではエイリアンで自己確保しながら上がっていく

1段目はアルパイングレード3級、2段目は2級

問題は直瀑の3段目

左右のブッシュ帯から大きくまけそうだが

滝の右側にある凹角から取り付く

古いハーケンが1本残されていたが

巨大なチョックストーンにカムを2つで確保しながら上がった

1ポイント4級ぐらいだろうか

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1段目の滝。簡単

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2段目のくの字の滝

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3段目は立っている。右の凹角から


その上はナメ滝が続いており美しい

やや傾斜の強い小滝をいくつか越え

南西稜上部についた

稜線の踏み跡をたどりクリヤ谷からの登山道に合流

ついでに頂上直下の4mぐらいのフィンガークラックも登り

(結晶が荒くて指が激痛、ガバを使わなければそれなりに楽しめる)

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南西稜についた。左の頂上に人が見える

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ついでにフィンガークラックを登って頂上へ

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ほぼ1カ月ぶりの笠ヶ岳頂上

写真だけ撮りすぐ下山に向かう

ビバークポイントでテントを回収し槍見まで

今シーズンはクリヤ谷を歩いている人は少ないとみられ

笹が密生して登山道を隠しているところが多かった

このまま雪が降ると、倒れた笹で道がいっそう覆われるだろう

来年、廃道化してしまうのではないのかと心配になった

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ササが生い茂るクリヤ谷登山道