漂泊山岳会ブログ

2020年8月結成

北ア・笠ヶ岳穴毛谷四尾根 20220409~10

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【形態】単独

【対象】雪稜

【場所】岐阜県高山市北アルプス笠ヶ岳4尾根

【特徴】雪が平年より多く、初夏を思わせる暑さの中での急斜面の上り下りは、雪崩を誘発しそうで気持ち悪かった。雪が多かった分、あちこちに美しいヒマラヤ襞が残っていた

【日程】2022年4月9~10日 

▽9日  岐阜県高山市神坂の登山者駐車場(1040m)4:00~4ノ沢出合~4尾根取り付き(1760m)~ 10:00岩峰~13:20緑の笠(2654m)

▽10日 緑の笠4:20~5:30笠ヶ岳頂上(2898m)5:40~6:20 4ノ沢Aルンゼ乗越~クリヤノ頭~クリヤノ岩小屋~11:50駐車場

 

▽9日 

満点の星空の下、ラテを付けて出発

左俣林道に入るとすぐに雪道になった

4月としては近年にない残雪だ

まもなく右岸に橋を渡り、穴毛谷に入っていく

デブリはほとんど出ておらず、歩きやすい斜面が続く

堰堤を難なく越えると、谷は北向きに曲がっていく

明るくなり始め、そろそろ日の出だ

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間ノ沢、三ノ沢からも大して雪崩れていない

四ノ沢など、まっさらな斜面が続き、

正面のピナクルと左の第一岩稜が好対照をなしている

いずれも朝日が当たって、まばゆくばかりに輝いている

こんな季節にピナクルに登れれば最高だろう

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三ノ沢と二尾根に上がれそうな斜面

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デブリがほとんどないきれいな穴毛谷

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四ノ沢の日の出。左の第一岩稜と右のピナクルが相似形をなしている

四尾根は以前、日帰りで登ったことがある

その際は四ノ沢を少し上がり、最初のルンゼを右に入って尾根に達した

尾根の直下がブッシュに引っかかったハング雪の連続で難儀した思い出がある

今日は四ノ沢出合~五ノ沢出合の間のルンゼを上がる予定だ

 

四ノ沢出合を過ぎ、

左岸には、穴毛谷の名前の由来となった巨大な穴が空いた岩壁がある

その正面が登り口になる

ルンゼにデブリはなく、雪面が硬い

尾根上のコルまで見えている近さだが、

アイゼンが滑ったら下まで行ってしまう急傾斜なので気をつけて行く

途中振り返ると、穴毛大滝が見えた

この角度で見るのは初めてで新鮮だ

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右のルンぜか、それとも左か。どちらを登ればいいのかは地形図に書いてある

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登り口は「穴」の正面にある

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この位置から見る穴毛大滝は初めて


コルに上がると三尾根が目の前に見えた

四尾根のここから上は薮、下はキノコ雪が続いている

なかなか絶妙な場所にあるコルだこと

このコルがないと、尾根に上がるのが大変そうだ

そのまま休まずに下部の急尾根に取り付く

薮が意外に密集して生えており、ザックに枝があちこち引っかかり上りにくい

しかも、薮と薮の間は急雪壁

後方から強い日差しが照りつけ始めたので、雪壁は緩む一方だ

できるだけ早く安定したところまで登りたい

休まずに登り続け、前回、四ノ沢側から登った地点にある緩傾斜地で一服する

ここまで来ると、尾根の幅は広がり、安定して登って行ける

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四尾根末端はキノコ雪がすごいことになっている

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三尾根と二尾根


尾根上には所どころシュルンドや大穴があり、

油断すると下半身がズボッと埋まってしまう

そのまま後ろ向きに滑落してしまいそうなので、

雪を踏み抜かないように注意する

尾根は北西方向から、緩く西方向に曲がっていく

この辺りは白馬主稜と同じくらい気持ちがいい

もとい

人がほぼいない分だけ、こちらの方が気持ちがいい

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あちこちにシュルンドが口を開けている

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穂高と五尾根を見ながら雪稜を行く。そろそろ雪がグサグサになってきた

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すると、上部に城塞のような岩場が近づいてきた

パートナーがいれば、まっすぐ岩登りするのも楽しそうだが、今日は1人

おとなしく雪壁から抜けることにする

さて、前回はどこから登ったのか全く記憶がない

そんな時はまずはしっかり観察

右側は急斜面で、行くのは危険だろう

左側は上がれそうだが、急角度になる辺りに3~4つの大きなしわが見えている

シュルンドだ。そこで1人作戦会議

岩場の基部まで右側から上がり、

基部を左に回り込んで、岩場左の雪壁を登ることにする

基部までは傾斜は急だが雪は安定している

しかし基部にも大きなシュルンドが発達していた

一度クライムダウンし、左に回り込もうとするが、

3~4つのしわに見えたシュルンドが大きく、上がって行けそうにない

もう一度基部まで上がり、ロープで確保しながら登ることに変更

基部の直径2~3センチの灌木にロープの末端を結び、

シュルンドを踏み抜かないようにトラバース

途中、気休め程度の細い灌木に中間支点を2つ取り、急雪壁を10m登ると、

立派な白樺の木に支点を取れた

再び、最初の支点までクライムダウンし、支点を回収しながら白樺まで

1人でロープを使うと、尺取り虫スタイルになるので疲れる

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岩峰が近づいてきた。どこから登ろかな

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左から第一岩稜、第二岩稜、ピナクル。日本離れした光景にうっとり

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1ピッチロープを出した

そこからはさらに急斜面になった雪壁

強い日差しで雪は緩みまくっており、胸ラッセルになる

岩峰を回り込んで稜線まで距離にして100m足らずだと思うが、体力を消耗した

テン場に最適な岩陰があるコルでしばらく休憩

ピナクルの頂上とほぼ同じくらいの高さで

ピナクルと第一岩稜が重なって見える展望台だ

菓子パンでエネルギーを供給するが、

暑すぎるためか回復がはかばかしくない

もう緑の笠はすぐ目の前に見えるというのに・・・

その上は足首か、すね程度のラッセルが続き

20歩歩いては一休みしながら、ちんたら歩いて行く

右手には、10年ほど前の秋に五ノ沢を遡行した時に

気持ちよかったカールが広がっている

雨が多い年で、五ノ沢の核心のハング滝は完全なシャワー状態

あの時はやばかったなあ

それに比べると、今日の山はハイキングレベルかも

 

緑の笠の岩壁を右に回り込み、

左斜めに続く斜面を登っていくと、緑の笠の頂上に着いた

笠の頂上は目の前の別天地だ

時間は少し早いが、ここにテントを張った

高気圧の動きから、南西風が強くなると想定し、

西側と南側に特に大きなブロックを積んだ

スノーボーダー1人が頂上からカールに向けて滑っていた

笠ヶ岳なんて誰もいないだろうと思っていたので意外だった

ボーダーは抜戸方面の最低コルに上がり、姿を消した

今日はボッカも兼ねて、水2㍑や缶ビールも持ち上げたが

ちょっと体力的にきつかった

ビールを飲んで、東京FMのスナックラジオを聞きながらうとうとして翌日に備えた

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岩峰を越すと緑の笠の岩場が見えてくる

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緑の笠の頂上に着き振り返る

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笠のふところに抱かれて眠るなんて最高っ!

▽10日 

3時起床。4時20分に歩き出すころには、東の空が明るくなり始めていた

日の出が早くなったものだ

「グワワワワ」というライチョウの鳴き声ももう聞こえる

今日も暑くなることを想定し

南西尾根と別れる付近にある急雪壁を朝の早い時間帯に下りたいと思っていた

以前、抜戸南尾根を登ってクリヤ谷に下りた際

この雪壁がグサグサで不安定きわまりなく、とても怖い思いをしたためだ

 

まずは緑の笠をまっすぐ西に下り、そのまま急な雪壁を稜線まで

稜線上のハイマツはすべて雪で覆われており、今年がいかに雪が多いかが分かる

笠ヶ岳山荘を右手に見ながら頂上まで

頂上でちょうど日の出。いつ見ても気持ちがいいものだ

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すぐ下に緑の笠の頂上が見える

ふと緑の笠に目を落とすと、人がいる!

カールから上がってきた1人と、トレースをたどってきたと思われる2~3人

昨日作ったテンバ辺りで記念写真を撮っている

四尾根を登ってきたのだろうか

(その後、ヤマレコに五ノ沢を登り六ノ沢を下ったパーティーの記録が掲載され

た)

そそくさと頂上を後にして、南の尾根へ

南西尾根と別れる所にちょうど雪庇がない地点があり、そこから急斜面に下りる

朝早いためか雪面は硬く締まっており

まっすぐ下を向いて歩いて行けた

それでも四ノ沢に吸い込まれそうな急斜面だ

四ノ沢Aルンゼのコルで一休み

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以前、三尾根を登った時はロール状の大きな雪庇があったが、今年は顕著なものはなかった

そこから雷鳥岩までずっとトラバースが続く

もともと右足首が硬く動きが悪いため

この右斜面トラバースはアイゼンを引っかけやすい

気をつけながら進むが次第に足首が痛くなってきた

何度も小休止を繰り返しながら雷鳥岩着

そこからクリヤノ頭までもまだ右下がりの急斜面のトラバース

クリヤノ頭を回り込み、やっとのことで右足首のストレスから解消されるが

足首の痛みは帰宅後も数日続いた

クリヤ谷の雪はグサグサだが、大きな雪崩の危険は少ないと判断

面倒くさい広サコ尾根の下りを回避し、谷をまっすぐ降りてクリヤノ岩小屋

錫杖のアイスは、もうほとんど残っていなかった

そこからは踏み抜きが多くなりさらに消耗

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錫杖岳北東壁のアイス残骸を見ながら槍見へ

渡渉点を超しても雪道が続いた

槍見から車道を30分歩いて、駐車場に戻った。