中ア・玉ノ窪沢右岸尾根(木曽駒ケ岳北尾根)敗退 20230108~09
【形態】単独
【対象】やぶ尾根ラッセル
【場所】長野県木曽町・コガラ登山口(1336m)~玉ノ窪沢右岸尾根(木曽駒北尾根)2373mピーク
【特徴】この時季、やぶ尾根が呼んでいる気がして、つい向かってしまうが、いつも後悔する。今回は雪が多かったせいもあり頂上まで届かず、悔しさはひとしお。上部はおいしそうな岩場が続いていたのに。
【日程】
▽8日 コガラ6:00~11:00玉ノ窪沢左岸尾根取りつき~16:00テンバ
▽9日 テンバ3:30~5:00 2373mピーク 6:30~コガラ12:00
【8日】コガラ登山口からスタート。登山者の車は多いが、すべて麦草岳方面。駐車場すぐの分かれ道からもうラッセルの始まり。茶臼山方面への渡渉点から正沢川本谷に入る。雪が多く、岩の形が隠れてしまって歩きづらい。これはあかんと、左岸のがけを登り、やぶを突ききっていく。左岸の台地上を最初から歩いていくべきだった。
わかんを付けて終始ひざ~太ももラッセル。左岸台地が急傾斜になるところで再び河原に降り、渡渉して、右岸をやぶをよけながら歩いていく。途中、2度も雪を踏み抜いてザン靴はカチコチに。幸い浸水はなかったのでそのまま登り続けた。夏なら2時間で行けるところを5時間かかって、玉ノ窪沢出合着。かなり体力を消耗した。
尾根は玉ノ窪沢側から取りついた。急傾斜のラッセル地獄を越すと尾根状になり、ひどいラッセルからは解放された。尾根にはピンクテープがところどころあり、岩に赤ペンキで矢印がかかれていたり、雪崩そうな急傾斜のルンぜにはフィックスロープも。何より、ブッシュが鋸で切られ、通りやすくなっていたのはありがたかった。フィクスロープやピンクテープは色があまり抜けておらず、まだ10年はたっていないだろう。新たな登山ルートでも造ろうとしたのだろうか? 木曽駒に北から登れる尾根ということで、マニア向けにはいいかもしれない。
雪の多い河原歩きで体力を持っていかれたので、予定していたテンバより200m以上低い2280m付近にテントを張った。こんな低いところから頂上までは無理だなと、10年もの自家製梅酒でやけ酒。あまり風のない静かな夜だった。
【9日】目覚ましより早く2時過ぎに目が覚めてしまったので、準備をして出発。しかしラッセルはひどくなり、巨岩が次々出てきて、越していくのに時間がかかる。2373mの小ピークは麦草岳から木曽駒、将棋頭、茶臼山に続く稜線に周囲を囲まれた気持ちのいいピーク。テンバからここまで標高差100mに1時間半以上かかった。雪は多く、岩場も見える。これだけ早く出れば頂上まで行けるかも、という淡い期待はすぐに打ち砕かれた。今日は天候悪化傾向でもあり、残念だがここで敗退とする。夜明けまで時間あるので、震えながら待つ。満月の翌日で、月光に照らされた白銀の山々が美しい。頂上には行けなかったが、心洗われた瞬間だった。帰りは正沢川でまたドボンして靴を凍らし、コガラまで歩いた。誰にも会わない2日間。駐車場から玉ノ窪沢右岸尾根を振り返ると、すでに上部には雪雲がかかっていた。
北ア・涸沢岳西尾根20221229~30(敗退)
【形態】友人と2人
【対象】雪山
【特徴】涸沢岳西尾根は5度目だが、友人がぜひ行きたいというので向かった。だがしかし、友人の体調悪化(喉痛&咳)で、晴天の2日目は一歩も登らずに下山した。西尾根には1800mぐらいまで先行単独行者のしっかりしていないトレースがあった(単独行者は途中敗退で行き違った)が、以降は太もも~腰ラッセル。4パーティ11人のうちの7人が交代でトップを務めながら上を目指したが、2300mの付近の小さな平坦地で夕方になってしまった。3パーティはそこをテンバにし、女性部員1人が遅れ気味だったR大学山岳部は150mぐらい下った尾根にテントを張っていた。翌日は朝から上天気。友人の体調は戻らず、そこから下山した。下山後、友人はすぐに抗原検査を受け陰性だったといい、ちょっとほっとした。
北ア・前穂20221210~11(敗退)
【形態】単独
【対象】雪山
【場所】岐阜県松本市・坂巻温泉下(1153m)~前穂高岳(3090m)
【特徴】五千尺ホテルのライブカメラで岳沢の雪がこの時季にしては少ないとわかり、重太郎新道から前穂へ。初日は秋のような快晴、温暖、無風。坂巻温泉の駐車場に止めさせてもらう予定だったが、早朝からの駐車はできなくなっており、温泉からさらに2つトンネルを下りた路肩駐車帯に駐車。そこから上高地までは徒歩2時間。岳沢は下部こそ雪が少なかったものの、岳沢小屋手前からひざラッセル。小屋から上はわかん履いて膝~股下。2350mの樹林帯上部に平坦地を見つけテンバとした後、トレースをつけに上がった。あわよくば頂上まで行こうと思ったが、病み上がりということでスピードは上がらず、2505m尾根に達したところで断念。翌日は低気圧接近に伴う悪天。強風に視界20m。雪強し。頂上に向かう天気じゃないなと、そのまま下山した。昨日つけたトレースはすべて消え、ラッセル下山だった。登山者には1人も会わなかったが、釜トン~上高地間でカメラマン数人、ハイカー5人に会った。釜トンから下部はみぞれで、びしょぬれになった。
【日程】▽10日 駐車帯4:20~6:20上高地6:35~9:20岳沢小屋9:40~2350m地点11:20~13:00 2505m地点 13:10~テンバ
▽11日 テンバ6:20~11:30坂巻温泉下の駐車帯
中ア・木曽川水系松渕沢~糸瀬山(1867m)20221022
【形態】単独
【対象】沢登り
【場所】長野県大桑村の木曽川水系松渕沢~糸瀬山(1867m)
【特徴】途中で誤った支流に入ってしまい、ボロボロ壁を登る羽目に陥った。クマの糞があちこちにあり、クマよけの笛を吹き続けた。日本登山体系8巻「八ヶ岳・奥秩父・中央アルプス」239ページの概念図は尾根などの位置が間違っているので要注意。
【日程】松渕沢の橋(670m)6:20~7:20大きな滝(百間滝)7:30~9:30ボロボロ壁~10:40水が涸れた尾根へ(1400m前後)~13:00頂上13:20~15:10駐車地点
国道19号から
「伝統の酒 木曽のかけはし」の大きな看板のある小さな交差点で
右の松渕沢林道に入る
きれいに舗装された林道で支障なく上がっていける
松渕沢の手前の道路際に駐車し出発
小さな沢だけに、すでに中・上流域の様相
薮が垂れており、くぐっていくのが鬱陶しい
いくつか滑滝があるが
その背後にはいつも堰堤があり
写真映えしない
地形図には3つの堰堤が書かれているが実際には4つある
最後の堰堤手前の左岸にはきれいな滑滝があり
見物に上がってみた
本流に戻り少し上がると巨大な滝にぶつかった
3段で80mぐらいはありそう
上段と下段は直瀑で見栄えがする
帰宅後、登山体系で調べると百間滝という名前の滝と分かった
これは登れないので巻くことにする
まくために樹林帯に入ると
岩に、見慣れた黒いしみのようなものが・・・
クマの糞だ!と思って周囲を探すと
すぐ近くの草の間に
消化しきれなかった木の実がたくさん入った糞があった
表面はぬめっとしており
この数時間以内に地上に降りてきたものだろう
もしかすると、まだこの辺りにクマがいるかも
ということで、クマよけの笛を吹き続けることにする
ただし奴らは秋には木の実を食べるのに一生懸命で
加えて沢の音で笛の音を聞き落とす可能性もある
以前、北ア三俣蓮華岳北東の硫黄沢上流付近で秋に
笛を吹き続けたにもかかわらず数mの距離でばったり会ってしまい
追いかけられたことがある
幸い、この時は走って逃げ切れたのだが・・・
ちなみに追いかけられたのはこの時が2度目
初回は5月の北ア錫杖沢でだったが
この時も走って逃げきれた
最近も台高で2度、10mぐらいの距離で向かい合ったことがあるが
この2回はこちら側が急斜面の上という位置関係だったので
たぶん体が大きく見えたのだろう
クマが逃げて行ってくれた
ただ、大きな黒い塊が木をバキバキっとへし折りながら
目にもとまらぬ速さで走っていくのには恐怖を感じた
至近距離でかち合って逃げ切れるのは幸運でしかなく
次にばったり会ったら食われるかもしれない
だからリスクを少しでも減らすため
クマの気配を感じたら笛を力いっぱい吹き続ける
だが、急斜面を登りながらでもあり、息が上がって疲れるばかりだ
獣道を通り
大きな洞窟2つの間を微妙なトラバースで急峻な尾根に出て
百間滝のすぐ上流に降りられた
さらに川幅が狭まってきた
しばらく行くと1140mの二俣
地形図を見ると左俣が本流と思われるが
右俣の方が水量が多い
左俣を進むことにしていたが
さてどちらに行くべきか?
迷った末に水量の多い右俣に変更
結果的に、この選択は誤りだったのだが・・・
出合の小滝を登りガラ場を上がると
20mぐらいの滑滝が出てくる
これは滑りそうなのでまくことを選択
不安定なガラ場をそのまま登っていくと
高さ50mぐらいのスラブ壁が出てきた
スラブ壁の傾斜は緩く見えるので難しくはないだろうと想定
早めに右の樹林帯に入るつもりで登り始めた
すると、岩くずのたまり具合や手がかりの多寡で
どんどん左の凹角の方に追いやられて行ってしまった
傾斜は強まるばかりで
まずいなあと思いながらも戻ることはせず登っていくと
突然、手に取る岩すべてが剥がれ落ちるボロ壁になってしまった
ヤバい・・・
しかしもう戻れないので
岩に力をかけないように凹角沿いにステミングで行き
最後の1歩は
根が浮いた小指ほどの太さの木に全体重を託して緩斜面に這いあがった
ルート選択を誤って行くも戻るもヤバいことになるのは
学生時代に一人で行った比良山の沢でもあったことを思い出した
あの時もそうだったが
簡単な沢だとなめていると痛い目に合う
これが沢登りの難しさなのかもしれない
水量はどんどん減り
そのうち全くなくなった
やっぱり予定していた左俣に行くべきだった
しかし後の祭り
このままやぶ漕ぎで突破することにした
標高は1400m前後
頂上まで450mもあるのでかなり時間がかかるだろう
小尾根に上がるとササ原が広がっていた
背丈は低いが急斜面になると頭の高さのやぶ漕ぎになった
尾根から付かず離れずに行くが
苦しい登りが続く
尾根の途中には
鳥の羽が散乱していた
持ち帰って調べると猛禽類の羽に似ている気がした
やぶ漕ぎを2時間半続けやっと頂上付近に着いた
三角点はどこなんだろう
いろいろ歩き回ると
巨岩があり、はしごが取りつけてあった
この上が三角点なのか???
一応登ってみた
巨岩には、はしごと鉄の鎖がつけてある
支点はリングボルト
リングはまだしっかりしている
岩に打ち込んである軸は錆びているかもしれないが
静荷重をかけるだけなら安全だろう
頂上からは歩きやすい登山道を通り
見ごろとなった紅葉見物をしながら駐車地点まで降りた
今日もだれにも会わない一日だった
中ア・木曽川水系小野川本谷~麦草岳 20111015
【形態】単独
【対象】沢登り
【場所】長野県木曽町の木曽川水系小野川本谷
【特徴】2週連続で中アのマイナー峰へ。凍っていない奇美世の滝は初めて見たが、全く迫力がなかった。初秋のような暖かい日だった。
【日程】木曽駒荘(1200m)6:10~8:00奇美世の滝8:10~11:00二俣(2250m)~稜線~13:20麦草岳(2721m)~16:30木曽駒荘
廃墟となった木曽駒荘前の道に駐車し出発
道標には「通行止」と書かれているが
大したことはないだろうと想定し歩き出す
それにしても小野川林道は長い
飽きてきたころ、林道が大水で崩れていた
そんな個所も10m足らずで、簡単に通過
しかし人が入っていないせいで薮が踏み跡を覆っていて歩きにくい
奇美世の滝の下に着くころにはかなり消耗していた
冬には何度か来たことがあるがこの時季は初めて
水流が少なくて迫力がない
アイスで登った時はロープを2本つないだ覚えがあるが
高さは40mもないんじゃないか?
もちろん登れないので巻く
簡単にまけたが
降りたった先はゴルジュで水流はあまりに貧弱
支流なんではないか?と思って
小滝を3つほどクライムダウン
奇美世の滝の落ち口に立ち本谷であることを確認し
再び登り始めた
ゴルジュの中に小滝がいくつも続くが
いずれも問題なく登っていける
西向きの沢なので朝早くは日が当たらず寒いが
段々明るくなってくると紅葉がきれいで
テンションも上がってくる
遠くから見ると登れなさそうな滝も
近くで観察すると登れる場所が見えてくる
やがて傾斜は急になり
滝が連なるようになる
15mぐらいの滝は巻き気味に登ったが
斜面の土砂がぐずぐずで意外に傾斜もあり
もっと大きくまいた方が良かったかも
砕石や流木が多くなると2130mの二俣だが
それを右に行く
さらに谷は狭まり
水流はちょろちょろになったので
プラティパスに水をくんだ
ガスがわき始め視界が悪くなってきた
2250mの二俣で左に入ると
まもなく水流は途切れる
正面に岩壁が現れたので
どこが登れそうか観察
簡単にまけそうだが
せっかくなので正面の真ん中のクラックを突破
途中2カ所で傾斜が強くアルパイングレード3級
緩斜面につくと上方にはガラ場が続いているのが見えた
それを樹林帯の手前まで
高度計は2450m付近を示しており
登山道は目の前にあると判断し
ウエットを着替えて小休止
5分ほどのやぶ漕ぎで登山道に合流した
しかし人があまり歩いていない登山道らしく
倒木ややぶが追いかぶさっている
最近、枝を払ってくれた人がいるらしく
少しは登りやすくなっている
ありがたやありがたや
でも体はなぜかバテバテ
休み休み歩き2週続きの同じ頂上着
もちろん誰もいない
時間が押しているので写真だけ撮ってすぐ下山にかかる
人が歩いていないため
ハイマツが生い茂りすぐに踏み跡を外してしまう
最近、ハイマツの伸びが早くなっているのではと思ってネットで調べると
思った通りの研究結果が発表されていた
https://www.pref.nagano.lg.jp/kanken/johotekyo/kenkyuhokoku/hozen/documents/7-8.pdf
温暖化で人が歩かないルートは消えていく運命にありそうだ
ぽくぽく歩き
暗くなる前に木曽駒荘に着いた