明日はどこへ

漂泊の記録

中ア・木曽川水系松渕沢~糸瀬山(1867m)20221022

【形態】単独

【対象】沢登

【場所】長野県大桑村木曽川水系松渕沢~糸瀬山(1867m)

【特徴】途中で誤った支流に入ってしまい、ボロボロ壁を登る羽目に陥った。クマの糞があちこちにあり、クマよけの笛を吹き続けた。日本登山体系8巻「八ヶ岳・奥秩父中央アルプス」239ページの概念図は尾根などの位置が間違っているので要注意。

【日程】松渕沢の橋(670m)6:20~7:20大きな滝(百間滝)7:30~9:30ボロボロ壁~10:40水が涸れた尾根へ(1400m前後)~13:00頂上13:20~15:10駐車地点

 

国道19号から

「伝統の酒 木曽のかけはし」の大きな看板のある小さな交差点で

右の松渕沢林道に入る

きれいに舗装された林道で支障なく上がっていける

松渕沢の手前の道路際に駐車し出発

小さな沢だけに、すでに中・上流域の様相

薮が垂れており、くぐっていくのが鬱陶しい

 

いくつか滑滝があるが

その背後にはいつも堰堤があり

写真映えしない

地形図には3つの堰堤が書かれているが実際には4つある

最後の堰堤手前の左岸にはきれいな滑滝があり

見物に上がってみた

左岸のきれいな滑滝

 

本流に戻り少し上がると巨大な滝にぶつかった

3段で80mぐらいはありそう

上段と下段は直瀑で見栄えがする

帰宅後、登山体系で調べると百間滝という名前の滝と分かった

これは登れないので巻くことにする

 

 

youtu.be

 

まくために樹林帯に入ると

岩に、見慣れた黒いしみのようなものが・・・

クマの糞だ!と思って周囲を探すと

すぐ近くの草の間に

消化しきれなかった木の実がたくさん入った糞があった

表面はぬめっとしており

この数時間以内に地上に降りてきたものだろう

もしかすると、まだこの辺りにクマがいるかも

ということで、クマよけの笛を吹き続けることにする

ただし奴らは秋には木の実を食べるのに一生懸命で

加えて沢の音で笛の音を聞き落とす可能性もある

 

 

 

 

以前、北ア三俣蓮華岳北東の硫黄沢上流付近で秋に

笛を吹き続けたにもかかわらず数mの距離でばったり会ってしまい

追いかけられたことがある

幸い、この時は走って逃げ切れたのだが・・・

ちなみに追いかけられたのはこの時が2度目

初回は5月の北ア錫杖沢でだったが

この時も走って逃げきれた

 

最近も台高で2度、10mぐらいの距離で向かい合ったことがあるが

この2回はこちら側が急斜面の上という位置関係だったので

たぶん体が大きく見えたのだろう

クマが逃げて行ってくれた

ただ、大きな黒い塊が木をバキバキっとへし折りながら

目にもとまらぬ速さで走っていくのには恐怖を感じた

 

至近距離でかち合って逃げ切れるのは幸運でしかなく

次にばったり会ったら食われるかもしれない

だからリスクを少しでも減らすため

クマの気配を感じたら笛を力いっぱい吹き続ける

だが、急斜面を登りながらでもあり、息が上がって疲れるばかりだ

 

獣道を通り

大きな洞窟2つの間を微妙なトラバースで急峻な尾根に出て

百間滝のすぐ上流に降りられた

さらに川幅が狭まってきた

大きな滝の上流に降りられた

簡単そうに見えるが・・・バランスが悪かった滝

 

しばらく行くと1140mの二俣

地形図を見ると左俣が本流と思われるが

右俣の方が水量が多い

左俣を進むことにしていたが

さてどちらに行くべきか?

迷った末に水量の多い右俣に変更

結果的に、この選択は誤りだったのだが・・・

出合の小滝を登りガラ場を上がると

20mぐらいの滑滝が出てくる

これは滑りそうなのでまくことを選択

不安定なガラ場をそのまま登っていくと

高さ50mぐらいのスラブ壁が出てきた

左岸の支流からの水量の方が多い

出合から小滝を登る

この滑滝は滑りそうだなあ

ガラ場の先にあったスラブ壁

スラブ壁の傾斜は緩く見えるので難しくはないだろうと想定

早めに右の樹林帯に入るつもりで登り始めた

すると、岩くずのたまり具合や手がかりの多寡で

どんどん左の凹角の方に追いやられて行ってしまった

傾斜は強まるばかりで

まずいなあと思いながらも戻ることはせず登っていくと

突然、手に取る岩すべてが剥がれ落ちるボロ壁になってしまった

ヤバい・・・

しかしもう戻れないので

岩に力をかけないように凹角沿いにステミングで行き

最後の1歩は

根が浮いた小指ほどの太さの木に全体重を託して緩斜面に這いあがった

ルート選択を誤って行くも戻るもヤバいことになるのは

学生時代に一人で行った比良山の沢でもあったことを思い出した

あの時もそうだったが

簡単な沢だとなめていると痛い目に合う

これが沢登りの難しさなのかもしれない

ボロ壁を登り切り、下を見てホッ

ぬめりが激しくなってきた。細々とした水量で、ルート選択の誤りを確信した

紅葉が目に染みる

沢は斜面に吸収されてしまった。土壁を登っていく

水量はどんどん減り

そのうち全くなくなった

やっぱり予定していた左俣に行くべきだった

しかし後の祭り

このままやぶ漕ぎで突破することにした

標高は1400m前後

頂上まで450mもあるのでかなり時間がかかるだろう

小尾根に上がるとササ原が広がっていた

背丈は低いが急斜面になると頭の高さのやぶ漕ぎになった

尾根から付かず離れずに行くが

苦しい登りが続く

これは何の糞だろうか?1日か2日はたってそうだ

やぶ漕ぎに疲れ、途中にあった岩小屋で泊まりたくなった

腐った木の株に、鳥の羽がたくさん付着していた。見通しの良い尾根上で、高い木もある。上に巣があるのかもしれない

猛禽類だろうか

尾根の途中には

鳥の羽が散乱していた

持ち帰って調べると猛禽類の羽に似ている気がした

www.tcp-ip.or.jp

やぶ漕ぎを2時間半続けやっと頂上付近に着いた

三角点はどこなんだろう

いろいろ歩き回ると

巨岩があり、はしごが取りつけてあった

この上が三角点なのか???

一応登ってみた

苦しい登り

巨岩にはしご。登ってくださいと言っているかのようだ

岩の上部はリッジ状になっており、鎖がつけてある

岩の最上部に到達。ここが頂上なのか?

巨岩には、はしごと鉄の鎖がつけてある

支点はリングボルト

リングはまだしっかりしている

岩に打ち込んである軸は錆びているかもしれないが

静荷重をかけるだけなら安全だろう

 

youtu.be

 

頂上からは歩きやすい登山道を通り

見ごろとなった紅葉見物をしながら駐車地点まで降りた

今日もだれにも会わない一日だった