台高 吉野川水系北股川柏原谷右俣~無名峰(1168m) 20210529
【形態】単独
【対象】沢登り
【場所】奈良県川上村の吉野川水系北股川柏原谷右俣~無名峰(1168m)
【特徴】こぢんまりした沢で半日程度で出合に戻れる。登っている最中は広葉樹林で新緑が美しいが、下降に使った東尾根は途中から左斜面が人工林になって緑を楽しむことはできない
【日程】2021年5月29日
北股川ゲート(425m)6:30-柏原谷出合(435m)―8:00二俣(548m)―11:30頂上13:00―出合―15:00ゲート
北股川に沿った林道が三之公川方面を分けた後
左岸から右岸に渡る橋にゲートと鍵が設置されていた
昨年9月から一般車両は通行止めと書いてある
でも次々に一般と見られる車がゲートの鍵を開けて入っていく
入ろうとしていた奈良ナンバーの車の男性に聞くと
釣り人は入っていけるのだという
入漁券を買うなど、地元に貢献しているからか?
登山者はもちろん経済的な地元貢献はほぼゼロ
仕方なく橋のたもとに駐車し歩いて入山する
柏原谷出合はゲートから5~10分の至近距離だった
見過ごしてしまいそうなほど小さい谷だが、5mほどの橋が目印になる
入渓したすぐの場所には
釣り人が捨てた釣り糸を巻いていたケースなどがたくさん散乱していた
釣り人は地元経済には貢献しても、環境保護には貢献しない人も少なくない
登山者はこんなもの捨てないぞ
沢はすぐにゴルジュっぽくなるが
難しい滝はない
梅雨に入ったが時期が早く
まだヌルヌルが残っており慎重に登る
顕著な二俣で右俣へ
左岸の壁、右岸のスラブの間を一筋の滝とナメ滝がかかる
登れる滝も登れない滝もあるが適当に越えていく
V字に切れ込んだ滝ではシャワーを浴びて登る
しびれるほど冷たくなくて助かった
日が照り出すと新緑が輝く
自然林なのかどうか分からないが
広葉樹が谷を覆い尽くしていて美しい
いくつかある10mぐらいの直瀑は苦もなく巻いていける
800mぐらいからはナメ滝が延々と続く
ラバーソールシューズとナメ滝の相性はあまり良くない
滑らないように気をつけて行く
水流がなくなり、砂利や倒木が増えたら左の斜面へ
しばらくジグザグに登るとピークより数10m南の稜線着
急な稜線をたどって頂上に着いた
北西からの風が涼しい
ピークの岩には小さなケルンが作ってあった
まだ時間は早いし、下りの尾根も分かりやすそうなので
ウエットを乾かしがてらまったりする
台高では岩で尖ったピークが少なくないが
ここもそう
頂上の岩の上に座っているとお山の大将になったようで気持ちがいい
ソフトバンクは通じたが、ドコモは通じなかった
1時間以上休んで、南東尾根へ
薄い踏み跡が続いており迷うことはない
しばらくすると左斜面がスギの人工林になる
人工林の森は薄暗く、春の陽光が全く入らないから生物相は貧弱だ
森の手入れがされていればまだしも
枝打ち、間伐がなされていない森が続く
山持ちとすれば
伐採、搬出してもそれに見合う売り上げにならないからだろうし
公金の補助割合が高くても後継者がいないため再植林の費用も出したくないのだろう
日本の山はこんな伐採期に入った人工林の森が何万ヘクタールもほったらかしだ
このまま森が荒れ、山が崩れるのに任せるつもりだろうか
1040mで南南東方面の尾根に入り
840mでまた南東方面に尾根の向きが変わる
途中、急斜面もあるが特に問題になるところはない
地形図の461m付近の林道に降り立った
まだ日は高いので
北股川の河原でウエットを乾かしていたら
体長1・5mぐらいのアオダイショウが荷物を置いた岩の間から顔を出し
うわっと飛び退いた
こんなに巨大な野生のヘビを近くで見るのは初めてだ
マムシより遙かにデカく
腹の辺りは一回り太くなっている
野ネズミか何かを飲み込んだのだろうか
よく見ていると
岩の上にトカゲがおり、アオダイショウはトカゲに向かって岩をはっていく
距離が30センチぐらいまで近づき飛びついて食べるのかと思った瞬間
アオダイショウはUターンして岩の間へ
トカゲはお気に召さないのかと思った
ところが今度はトカゲがおかしな動きを始めた
今までじっとして動かなかったのに
アオダイショウがUターンした後は
あちこち落ち着きなく動き回り始め
アオダイショウの後を追い始めたのだ
岩の間でアオダイショウに追いついたと思ったら
なんと体の上に乗っかった!
でもアオダイショウはじっとしている
数秒後、トカゲはアオダイショウの体から下りて
どこかへ姿を消した
いったいなんなんだろう?
トカゲが乗っかった場所はアオダイショウの頭のすぐ下の辺り
ちょうど自分でなめたりしてきれいにするのは難しい位置だ
トカゲはアオダイショウの上で何かをなめるか食べるようなそぶりをしたように見えた
トカゲはヘビの体に付く小さな虫を食べてきれいにしてやり
いつもヘビの近くにいることで他の天敵から守ってもらうなど
相互に利益を与え合っている共生関係なのか?
それともただの恋ヘビ同士?
不思議な2匹の動きだった
不思議と言えば
北股川の水面の10mぐらい上空では
大量の白い虫が垂直に飛び上がったと思ったら
自由落下する運動を繰り返していた
奈良の山は奥深く
その分、生物の営みもこれまで見たことのないものが多いと思った