明日はどこへ

漂泊の記録

北ア・笠ヶ岳穴毛谷4の沢右俣 20230423

 

尖峰がナーゲル。剣岳クレオパトラニードルより尖っているかも


【形態】単独

【対象】雪山

【場所】岐阜県高山市新穂高(1050m)~笠ヶ岳(2898m)

【特徴】落石の巣と思われる急なルンぜ。日が照る前に抜け出たかったが・・・甘かった。ビュンビュン飛んでくる落石をロシアンルーレットのように避けながら登る羽目に。もの好きな人向けのルート

【日程】

▽23日 新穂高無料駐車場(1050m)1:20~3:30 4の沢出合3:40~7:30頂上7:40~11:40駐車場 

矢印下の白い筋が4の沢右俣。〇は落石多発地帯

きれいな星空を見ながら出発

今日は少し冷え込んでおり、雪の上も歩きやすいだろう

左俣林道から穴毛谷方面の林道へ

終点まで来ると今年の異常な雪の少なさが分かる

すでに巨大堰堤には滝のような雪解け水が流れ落ちている

ラテで照らすと細いスノーブリッジが残っている

渡ろうか、渡るまいか迷うところだが

落ちたらただでは済まない

面倒だが水の中の石を飛び飛びに行くことにする

だが途中で水が深いため渡れず

一度戻ってアイゼンをはいて渡った

巨大堰堤を右岸から越すと雪が出てくるがすでにズタズタになっているのが分かる

これは時間がかかりそうだ

 

右岸の雪を拾いながら2の沢出合を越えていく

雪渓は波打っており段差が5mもあるところも

間の沢出合付近の滝も一部出ていたが渡渉することはなかった

雪の割れ目は3の沢出合辺りまであった

今年の雪解けは早すぎだね

まだ真っ暗で3の沢に危うく入ってしまいそうになった

少し降りて本谷に戻った

その辺りから雪面は歩きやすくなった

4の沢出合で小休止

今日はこと座流星群が最もよく見える日だという

ラテを消して上空に目を向けていると

人工衛星のようなしっかりとした光跡が南から北に通った後

北西方面の空に小さな流星が2つ見えた

4の沢出合。まだ真っ暗

右俣に入ってしばらくすると周りが見えてきた

デブリには砕石がたくさん混じっていた。なぜだかは後になって分かった

4の沢に入ってしばらくたつと東の空が少しずつ明かるくなってきた

うっすらとピナクルの尖峰も見える

二俣から見る右俣にはデブリがたまっている

比較的柔らかくまだ新しい雪崩の跡

暗闇でよく見てみると

デブリがごま塩のように見える

親指と人差し指で丸を作ったぐらいの大きさの砕石がたくさん混じっているのだ

こんなデブリは初めて見た

嫌な予感がするが、そのまま登っていく

傾斜は次第に傾斜を増す

明るくなり視界が聴くようになると

左手前方にピナクル

谷の正面にナーゲルと呼ばれる尖峰が見えた

なかなか日本離れした眺めですな

正面にピナクル。右手にナーゲル

 

ピナクルが真横に

右のガリー状に進む

ガリー状の入り口まで来ると、正面の壁に日が当たってきたのが見えた

ピナクルが左後方になると

上方で谷が2つに分かれているのが見える

その正面の岩壁最上部がナーゲル

これから行くルートは右俣だが

岩壁に囲まれた狭いガリー状の形状となっている

またまた嫌な予感

落石に襲われたら逃げ場が少ないだろう

様子を見る思いで近づいていく

 

ガリー状の入り口まで来ると

いきなり「ギュイン」という風切り音とともに

握りこぶし大の落石が左ひざの数十センチ横を飛んで行った

「ヤバいっ」と息を飲んだが

すでに谷の鉛直方向には絶え間なく落石が落ち始めていた

ちょっと観察すると

指先から数センチ大までの小さな落石はスピードが遅く

雪の上をはねるように落ちていく

これは上をよく見ていれば避けられそうだ

だが

握りこぶし大以上の大きさの落石は

その重さゆえにどんどんスピードを上げ

左右の壁にぶつかりながら(火花を上げながら)すっ飛んでくる

谷の中を跳ね回りながら飛んでくるだけに避けきれないかもしれない

落石の供給源はガリー状の谷が右手にカーブするところにある左手岩壁のようだ

すでに日が当たり始めているためだろう

もっと早出をすべきだった

 

youtube.com

行くべきか、戻るべきか

ガリー状は距離200~300mぐらいか

まだまだある

戻るにしても、上を見て落石に注意を払いながら

この急斜面を後退していくのはなかなか困難だ

右手岩壁(4尾根側壁)もボロボロだが

まだ日が当たっていないだけに落石はこない

そこで

右手岩壁に身を隠せるところまで走って登り

息を整えてまた走る、を繰り返して抜けることにする

左手上部が落石の供給源

落石が少なくなった瞬間を狙って走る

右手のシュルンドの中や出っ張った岩の陰へ

5~10mぐらいずつ進む

荒い息が平静に戻るのに時間がかかる

匍匐前進している気分だ

また一つ握りこぶし大の落石が右の壁に当たり

頭を上をかすめていった

思わず首をすくめたが

あの風切り音は異様な迫力がある

 

息が絶え絶えになってガリー状を抜けて右手の雪渓へ

なんとか助かったようだ

その辺りから雪面はさらに傾斜を増していく

ガリー状のところで走って止まってを繰り返したために体力が尽きたようだ

20歩歩いては休む亀の歩み

正面に段々になった岩壁が近づくと右手に雪面が続いているのが見えた

これが緑の笠の台地への通路だろうと思っていくと

小尾根の上に出た

振り向くと、緑の笠はすでに遥か下になっていた

先ほど避けた岩壁は頂上直下の岩だったようだ

そのまま小尾根を登っていくと右手に笠の山荘が見え

左の緩い斜面を登って頂上着

何とか無事に着いてほっとした

上部岩壁が見えてきた

バラの花が咲き乱れ

ナーゲルは遥か下になった

小尾根に上がったら、緑の笠はもう下だった

下り始めると

別の男性登山者が登ってきた

そちらに近寄って話すと5の沢を登ってきてクリヤ谷を下りるそう

去年、4尾根を登った時も5の沢を登ってきたパーティーがいたから

5の沢は人気なのだろうか

秋に沢登りで行ったことがあるが

5の沢の左右の壁は固いので落石は少ないだろう

 

稜線を抜戸方面に行き

抜戸岳手前の7尾根から降りていく

最初は気持ちの良い傾斜だが

途中が岩壁になっている

少し戻り、ガリーを後ろ向きで降りて

7尾根下部を回りこみ本谷方面へ

雪面は今朝の冷え込みで比較的固いだけに

スリップには気を付けたいところだ

7尾根を下りていく

7尾根下部から杓子平を見る。傾斜は45度ぐらいだろうか。まっさらな斜面は距離が分からない

ザイテンタールから第一岩稜が正面に見える

4の沢の出合に戻り、かっこいいピナクルを眺める

杓子平を大きく回り込んで

急斜面をトラバース気味に下りザイテンタールをまっすぐに降りる

すでに穴毛大滝もなかなかの水量だ

5の沢出合から傾斜が落ちてくるが

疲れが足首に来ており

たらたら歩いて巨大堰堤

林道をぽくぽく歩いて駐車場に着いた