明日はどこへ

漂泊の記録

中ア・木曽川水系伊奈川東川北沢~東川岳 20220702~3

 

【形態】単独

【対象】沢登

【場所】長野県大桑村木曽川水系伊奈川東川北沢~東川岳(2671m)

【特徴】大きな滝もほぼすべて登れる面白い沢。初日の午後に1時間半、雷雲に巻かれ、生きた心地がしなかった。つめのやぶ漕ぎは大したことはなく稜線に立てた。

【日程】

2022年7月2~3日 

▽2日 伊奈川ダム下ゲート(950m)4:40~6:00東川橋(1255m)~10:00登山道の渡渉点(1625m)~14:00 2050m二俣

▽3日 テンバ4:30~5:40 2310mの二俣~6:40縦走路~7:10東川岳~12:10伊奈川ダムゲート下

 

▽2日

伊奈川ダムゲート下の路肩には16台の車でいっぱいだった

予想外に早い梅雨明けで登山者の出足も早そう

歩き出そうとしたら和泉ナンバーの車の登山者3人組に

「半ズボンで行くんですか?」と尋ねられた

質問の意味がよくわからなかったが

沢登りなので林道で着替えるからと適当に応え歩き出す

 

歩きなれた伊奈川沿いの林道

とはいえ6~7キロの林道歩きが面白くないことに変わりはない

できる限り汗をかかないように行く

入渓地点の東川橋には「釣り人へ」という看板が置いてあった

上流で工事をやってて気を付けろという趣旨だが

北沢に入るまで工事個所はなかった

入渓地点の東川橋

最初は河原歩きだがすぐにゴルジュっぽくなり

5mぐらいの釜を持った3m滝に分ぶつかる

まだ水には漬かりたくないなあと思いながら釜の端を歩こうとすると

いきなり深みにはまり泳ぎになってしまった

何とか滝の上に這い上がったが

「厳しい谷なのかなあ」と気が重くなった

そこからもゴルジュが続くが

小滝だかりで簡単

一番難しいのは取水堰堤登りだった

合流点に見栄えのする滝のある左岸支流を2本やり過ごし

しばらく河原歩きの後北沢に入る

いきなり泳いだ釜と滝

取水堰堤を越える



いくつか小滝を越えると河原になり

両岸に赤テープが見えた

木曽殿山荘への登山道の渡渉点なのだろう

 

さらに行くと本流は東へと向きを変える

ゴルジュっぽくなり小滝が続くようになる

すると20mぐらいの滝

どこから登ろうかをしばらくラインを追うと

登れそうなところが見えてくる

簡単に、気持ちよく登れた

北沢に入ると小滝が続く




次は右から支流が合流する10mぐらいの直瀑

たぶん1800mの二俣付近だろう

「これは登れないかも・・・」と思ってすぐ下で滝を見つめると

これも登れそうなラインが見えてきて、簡単に越えられた

滝は真下でよく観察することが肝心だ

1800mの二俣。左へ

 

50mぐらいの一枚岩。どこから登ろうか

いくつか小滝を越すと

高離50mぐらいの一枚岩が立ちふさがった

地形図1900mの滝マークだろう

水流は岩壁の左側を落ちている

どこから登れるのだろうか

こういう時は観察、観察

ザックを置いて岩の下を右へ左へ

岩壁中央右の凹角が適度にホールドが続くように見えた

ここを登ることにした

中間部のレッジから下を見る。もう戻れません



傾斜の緩い下部は簡単

途中で突然ホールドがなくなる

右手の甘いカチ、右足の斜めスタンスで体を上げ

遠い左手のガバを取りレッジへ

今回、クライミングシューズを持ってこなかったのは失敗だった

この岩はスタンスが小さいところがあるので

ライミングシューズをはいた方が良かった

その上は明瞭はクラックがあるがバランスは悪く

高さがあるので思い切りがいる

中間部のバンドに慎重に這い上がった

アルパイングレード4級

複数で行くならロープを使った方がいいだろう

下部に錆びて斜めになった古い残置ハーケンがある

 

すぐ上には10数mの滝

ここも気持ちよく登っていける

小滝を無数に越えていくと

V字ハング岩が覆いかぶさった印象的な直瀑

これは登れないかも・・・と思ったが

しぶきをかぶるところまで近づくと

登れそうなラインが見えてきた

どの岩もヌルヌルでちょっともろいが登れた

アルパイングレード3級

V字状のハング滝が見えてきた

 

youtu.be

 

滝の上に立つとまた30~40mほどの高さがある扇型の滝が見えた

水流は2つあるので

たぶん2050mの二俣だろう

右の方が水量は多いので本流だ

さてどこから登ろうか

本流側は凹角だが水流が多く却下

支流側はぬめってそうだ

傾斜の緩そうな場所からスタート

だんだん傾斜が急になり

手にする岩手にする岩が剥がれ落ちるようになる

そんなときはできるだけ岩を引っ張らないように

マントル気味に体を上げていく

途中から右上

草付きを登り大きな木まで

アルパイングレード3級

すると雷鳴が比較的近くで聞こえた

2050 mの二俣にある大きな滝。これも登れる

雷雨の後で。もうビショビショ

これは雷雨が来るなと直感

時間は午後2時

どこか退避できる場所はないかと探すと

対岸にビバークにちょうど良さそうなテラスを見つけた

急いでそこにツエルトを張った

張り終わるのを待っていたかのように土砂降りの雨

ピカッ(稲妻)、バシンッ(落雷)、ドドーン(地響き)の連続

光った瞬間に落ちており

雷様までの距離は数10~300m

近くの木か岩に落ちて電気が岩の上を走ってくるのではないかと思えて

生きた心地がしなかった

 

1時間半後、やっとどこかに行ってくれて雨もやんだ

濡れたウエットのままでいたので寒くて震えがきていた

乾いた服にチェンジすると人心地がつけた

近くに薪もたくさんあるが

すべて水浸し

焚火はあきらめガスで水を沸かして飯を作った

ラジオの天気予報では明日は一日雨で午後は雷雨とのこと

天気が良ければ南駒まで歩く予定だったが

さっさと稜線まで登って、さっさと下山に変更することにした

 

▽3日

真っ暗な中起床

薄明るくなったころ出発した

小雨が降り続いているが

昨日の土砂降りにしては

沢の水は引いている

小滝をどんどん登り

2200mの二俣を右へ行くと

ゴルジュの向こうに稜線が見えた

ゴルジュは小滝が続くがどれも問題なく登っていける

途中でサンショウウオが2匹いるのを見つけた

背中の黄色い模様がきれいだ

捕まえようとするが

体がヌルヌルで元気がいいためすぐ逃げられてしまった

左の本流へ

こんなふうにほぼすべての滝を登っていける

2200mの二俣を越すと稜線が見える

サンショウウオを捕まえたがすぐ逃げられた

まだまだ続く

最後の滝。これは微妙だった


微妙な3mの最後の滝を越すと水はなくなった

2400mの二俣でどちらに行くか検討

どちらもハイマツ漕ぎが待っていそうだが

ひどい場合は冬に登った熊沢岳西尾根に逃げようと考え

左俣を選択

岩の斜面を追っていくと

やがてハイマツ帯にぶつかるが

背丈以上のやぶ漕ぎはほんの10分程度

あとは岩の上を登るか、背丈の低いハイマツを踏んでいくかで済み

2700mぐらいの稜線着

小雨もいつのまにかやんでおり

背後に御嶽山がきれいに見えた

2400mの二俣で左へ

高山植物が咲き乱れる斜面を登っていく

背後には御嶽山。手前は冬に登った熊沢岳西尾根

東川岳頂上では少し青空も見えた

木曽殿山荘のテラスで着替えさせてもらい

そのまま下山

帰りはずっと雨の中の歩きだった

 

東川岳頂上。一瞬だが青空も見えた